1,400万円払って拷問を受けた話


 この話の続きです。

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 ヴァージングループ創業者であるリチャード・ブランソン卿のプライベートアイランド、BVIにあるネッカー島にて、宇宙旅行のチケットをヴァージン・ギャラティックで購入した富豪たちと7泊8日を過ごした。

 参加費用は10万USD(当時約1,400万円)。シンガポールから6本のフライト。

 参加者は資産数十億円~数千億円クラスが約20人+そのセレブな奥様たち。プライベートジェットでの来場者も1人や2人ではない。平均年齢は50歳ぐらい。アメリカ人8割、他はイギリス、カナダ、オーストラリアなど。

 場違い。

 あまりにも場違い。全く会話に入れない。なぜ、どうして自分はこんな所にいるのだろう?

 開始5分でもう帰りたい。胸が後悔で一杯になり、目頭がジーンと熱くなって今にも泣き出してしまいそう。チラチラ目に入る時計の針は残酷なまでに進まない。開始20分で耐え切れずトイレへ逃げ込み妻にLINEで弱音を吐いてしまう(しかし時差のため既読が付かない)。

 これが朝食、アクティビティ、昼食、アクティビティ、カクテルパーティ、夕食…と、ぶっ続けで皆と一緒。そのセットを7日間連続である。

 キツい。ただただキツい。あんまりにもキツすぎる。本当に生きた心地がしない。この拷問は一体何なのだ。大金を払って一体全体何をやっているのだ。アメリカンジョークにしてはタチが悪すぎるのではないか…

 あと当たり前に英語がキツかった。この9ヶ月間割と勉強してきたつもりだし、仕事の電話を英語でストレス無くこなせる程度には上達したのでなんとかなるかなと思っていたが、全然そんなことはなかった。こういう場ではハリウッド映画を字幕無しで99%理解できるぐらいでなければ文字通り話にならないなと。

 ノリで表面的に仲良くなったりノンネイティブと1:1でスムーズに話したりするのとは全く難易度が違う。ネイティブがビジネスの話で盛り上がってる場にマジで入れない。たまに気を遣い話を振って貰えるものの、気の利いた返しが全然できずに忸怩たる思いに駆られる。

 もちろん足りないのは英語力だけではない。ビジネスレベルは当然として、金融や政治から、歴史宗教美術哲学といった教養に至るまで、あらゆる要素がことごとく欠落している。お互いに成長し合えるような関係性を築くなど程遠く、自分のコミュニケーションが世界では全く通用しないことを嫌というほど痛感した。

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 ただ、今回のコンセプトは「打ちのめされる」だったので、そういう意味では十分に成功したと思う。

 ある程度生活に困らない状態になり狭い世界でチヤホヤされていると、どうやら自分は凄い人間なのでは?ひょっとして自分は人生の勝利者なのではないか?などという恐るべき事実誤認の足音が迫る。これはまさに終わりの始まりで、無意識のうちに守りに入り、いつしか挑戦することをやめ、ズブズブ衰退の一途を辿って、ついには病床で肥溜めのような死を迎える。

 だから、打ちのめされたかった。どうせなら徹底的に打ちのめされようと思った。自分は底辺であると認識したかった。目に映るものすべてが途方もなく遠いところでキラキラ輝いて、そこに手を伸ばそうと朝も夜も無く必死こいていたあの頃のエネルギーを取り戻したかった。這い上がるエネルギーは唯一無二である。

 まだまだ自分の可能性を信じてみたい。世界で会う真の天才たちには一生を捧げても到底敵わないけれど、何者でもない自分がどこまで行けるのかを知りたい。それを知るまで歩みを止めるわけにはいかない。

 それにしても、彼らとビジネスの話をしてもっと仲良くなれたら…と思うとやはり悔しい。こんなぶっちぎりで最高の環境を全然活かせていない。本当に勿体ない。せめて英語ぐらいは何とかしよう。

 (今回、ぽつんとしてる時の気持ちが痛いほど分かった。声をかけられると救われたような気分になるので、これからは大人数の時は仲良しばかりで話すのではなく積極的にいろんな人に話しかけるようにしようと思った次第)

 もうひとつ、9ヶ月前に10万ドル払ってしまったので腹を括り英語学習をスタートできたのも良かった。こういう機会が無ければ中々本気で勉強しようとはならない。英語は人生における「重要だが緊急ではない」典型的な課題だ。ほとんどの人はアレコレ理由を付けて後回し後回しで、気付けば「今更やってもねぇ…」という年になり、そのまま閉ざされた世界で死んでいく。

 付け加えるなら、毎日ダラダラ飲んでいた酒を減らせたのも良かった。普通にバリバリ仕事して家族との時間を確保しつつ英語を毎日3時間とか5時間とか勉強していると時間が全然足りなくなるので、酒を飲む時間をカットせざるを得なくなったのだ。結果として年間350日間は飲んでいた酒の頻度はシンガポールでは週2程度に激減し、二日酔いになるほど飲むこともほぼ無くなった。

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 あれはもう10年以上前か。全財産10万円ぐらいなのに恵比寿のロブションへ強制的にブチ込んでいただいた時の記憶が蘇る。あの頃はビジネスを始めたばかりで、札幌から東京への出張ではビジネス得意ですみたいな顔をしておきながら、夜は金欠のあまりマンボー(ネカフェ)に泊まっていたものだ。

 それまでの人生における一番高価な食事なんて大学生が来るようなダイニングカフェのスペシャルコース5,000円とかだったから、ロブションではそれはもう味なんか当然分からず、何を食ってるのかさえ分からず、「フォーク ナイフ 外側 内側 どっちから」などとググりながら変な汗をベッチョリかいて、ひたすら居心地の悪い時間を過ごしたのを覚えている。

 ところが、そんな環境も数年後には当たり前になっていたので、いかなる不快環境であっても一度経験してしまえばいつのまにか対応できるものだと知った。強烈に突き動かされた97%を司る潜在意識が新世界へと手を引いてくれるのかもしれない。

 同じように、今回の超不快環境も数年後には当たり前になっているような気がする。それはやはりリアルで強烈な刺激を受けたからだろう。どれだけ本を読み漁ろうと、どれだけ画面越しにコミュニケーションを重ねようと、こうはならない。

 それにしても人間の適応力って大したもんで、4日目頃からは場の空気に慣れてきてストレスが目に見えて減り、ある程度意味のある時間を過ごせるようになってきた。この環境にいる自分が当たり前のような気がしてくるのだ。環境が大事!環境を変えよう!などと幾度となく偉そうに発信してきたものだが、その力をこれほど短時間で改めて実感できるとは思わなかった。

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 このプライベートアイランドでは本物の大富豪の世界を垣間見ることができた。端から端まで徒歩15分ぐらいの小さな島全体が、想像しうる最高のモノをすべてブチ込みました!とでも言わんばかりの超ラグジュアリーリゾートになっている。そんな空間に人生の成功者ばかり集まっているものだから本当に”気”が良い。

 齢60を超え夫婦で一緒にここに来れるなんて人生が総合的に極めて高いレベルで上手くいっている証拠だから、そんな方々とじっくり話させていただくと今後の生き方のヒントがたくさん見つかる。富豪を支え続けてきているセレブ妻たちの話も大変興味深かった。夫たちがビジネスの話に夢中になっていると奥様は大体参加できなくなってしまうものだが、そのタイミングで奥様に話しかけると嬉しそうに沢山喋ってくれることに気付いてからはとても楽しかった。

 あと誰もスマホを全然いじってないのが印象的だったな。起業家が集まると大体みんなスキあらばスマホをいじってチャットに返信したり情報収集したりしてるけど、ここに来ている富豪たちはスマホ携帯してるのか?レベルでスマホに触れない。時間が勿体ないから…という慌ただしさを一切感じない。その心の余裕がビジネスも人生も更に豊かにしていくのだろう。

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 最後に、リチャード・ブランソン卿から直々にいただいた金言をシェア。

1.Enjoy – 楽しもう。酸いも甘いも楽しもう。それこそ神が人に与えし最大の快楽だ。もしも楽しめないとしたら、それは間違ったことをしているということ。今すぐ次の段階に進むべきだ。

2.Challenge – どんどん新しいことに挑戦しよう。長期的に見ればリスクなど存在しない。自分を信じよう。ここまで来れた君なら大丈夫。

3.Delegation – 君は忙しそうだね。けど、なんでもかんでも自分でやろうとしてはいけない。自分を信じて働いてくれる人を信頼しよう。そうすることで自分の人生を豊かにしたり、周囲を幸せにするための時間を確保できる。

4.Family – Happy Wife, Happy Life. 人生の基盤は家族だ。寄り添い、寄り添ってもらおう。ちょっぴり大胆になろう。家族との時間を何よりも大切にしよう。成功するから幸せになるのではない。幸せになるから成功するのだ。この順序を間違えてはいけないよ。

 彼はこんな自分の話にも耳を傾けてくれ、72歳とは思えぬ生命のエネルギーを、一度きりの人生を世界最高レベルで楽しむ目も眩むような情熱と美しさを、短い時間ではあったがひしひしと感じることができた。

 金を使わない=金を価値に変換する機会の損失だし、その価値に変換する能力は加齢と共にどんどん低下していくので、金を使わないことを不安に思うべきである。稼いだ金は使ってはじめて意味がある。これからも新しい世界へどんどん飛び込んでいきたい

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“1,400万円払って拷問を受けた話” への6件のフィードバック

  1. 石塚 より:

    柏崎さん、こんにちは。
    いつもビックリする話⁉️
    楽しく読んでます(すみません)

    来年もよろしくお願いします。

  2. 辻 堪子 より:

    柏崎さんへ
    現状に甘んじる事なく、更なる高みへと目を向ける・行動する、その姿に感動しました。
    『幸せになるから成功する』大切な考え方なのですね。
    様々な思い、ご経験をシェアして下さってありがとうございます。少しでも前へ進める様に吸収させて頂きます。

  3. 宮越 より:

    高みを追い続ける、柏崎さんは、やはり凄いです。
    読んでいて、ドキドキ冷や汗を感じます。まさに拷問ですね。
    シェアして頂いた金言は、全くにその通りと理解出来ます。しかし私は、それを実戦できるレベルの人間ではありません。その方向は向いて生きたいと思います。
    ありがとうございました。

  4. 小柳 より:

    柏崎様。有難うございます。人生上手く行かないね。来年は少し楽な生活ができます様に??
    柏崎様はやはり凄いですね。!

  5. ルフィ より:

    久々に、柏崎節を聞きました。やはり、ただものではありませんね。色々な苦労も体験もされ、着実に成果を上げられてきた。
    コレからもご活躍を期待します。

  6. ルフィ より:

    柏崎さんは凄いですね。
    色々な苦労も体験もされてきて,それを活かして今があり,さらに前へと進もうとしていられる。
    今後のご活躍を期待しております。

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